新聞屋になる
この世に就職情報誌は数あれど、新聞販売店の持ち方を書いてあるようなものはないでしょう。
ここでは新聞流通の末端、新聞販売を取り巻く職業にどうやって就くかの話しです。
新聞社への就職方法なら就職情報誌に十分載っています。
新聞屋になるための基礎知識その一
販売店の種類
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独立法人の販売店
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その支店
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新聞社直営の販売店
まず独立法人の販売店から。
新聞販売店(販売会社)は基本的に個別の法人が新聞を仕入れてそれを販売するという普通の商店のような商売をします。直接新聞社が新聞を販売すると言う訳ではありません。他の商売で言えばガソリンスタンドなんかが同じような感じでしょうか。○○商事や△△商店がガソリンをガソリン会社(卸)からガソリンを買ってその銘柄で売る、それと同じです。だから、販売店によっては□□新聞店や××新聞舗と言う名前を扱う新聞社の接頭に名乗ったりしています。実際の経営などは後述(「店を持つ」のところで)。基本的に販売店は全て独立法人です。
次にその支店。
個人経営の販売店の規模が大きいと支店をいくつも持っているという場合も有ります。権利を買い取れば(これも後述)支店はナンボでも持てます。□□新聞店※※支店などと名乗っていれば販売店の支店です。経営の母体は本店にあり、支店には販売権利を持たない雇われ支店長が据えられています。
最後に新聞社直営の販売店。
販売店の店主が逃げてしまった(新聞社に借金を作り過ぎたとかね)、経営が悪化した、新設の販売店などは新聞社直営の販売店として一時的に存在する場合が有ります。基本的に新聞社は販売店を持ちません。新聞社が販売店を持っても商売にならないそうです(生ぬるくなり過ぎて)。新聞社がある程度経営を立て直すなり安定させるなりしたあとは権利は払い下げられます。
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新聞屋になるための基礎知識その二
仕事に就く販売店を選ぶ
自分が新聞屋になる為に仕事に就く販売店の選びかたをちょっと。
まず、給料、仕事の内容などは販売店によってかなり違って来ます。基本というものが無いようで。ですから販売店に問い合わせて見てこの条件なら働いてもええなぁと思ったところを選ぶ、と言う事になるのでしょうね。
私の場合、家から一番近いところにあった(購読していた新聞の折り込みに募集の広告が入っていた)ので今いるところに入店しました。条件等はその当時他と比較するなんてことは考えませんでしたのでそんなものかと納得しました。実際、現在でも文句はありません。で、バイトは折り込み作業はしなくていいと言われました、そして今でもやっていません。しかし、本店の方ではバイトでも折り込み作業をするそうです。こういう細かい点は本店支店でも違ってくる場合が多いようです、よく確認した方が良いでしょう。
給料も、店主によって考え方が違うとか。アルバイトの場合、「1ヶ月1部配ってナンボ、だから君が配る事になる区域だとこれくらいの給料になるよ」とか、「君はいくら欲しいの?それじゃこれだけ配ってもらうよ」とかね。専業なら、基本給があってその他に何とか手当(役職手当、管理手当、業務手当、出勤手当、家族手当、住宅手当、カード料等そりゃあもう多数)とかで固められた給料になるようです。手当の種類が多い分基本給は低くなる、と。ボーナスや社会保障関係は基本給が基本になりますからこの点はっきりさせておいた方が良いかも。
そして、非常に重要な点が1点。
週休をちゃんとくれないようなところは止めた方が良い。(経験者談)
こういうところは社会保障がしっかりしていない場合が多いそうで。店主の経営姿勢が見えてくるところだそうです。また、「今は人手が足りなくて週休をあげられないけど、余裕が出来たら、ね」なんてところも信用ならないとか。更に聞いた話しでは、バイクの保険にも入っていないようなところも有るとか無いとか。事故が起こりやすい配達、そこで事故を起こしても骨を折っても保険が下りないなんて悲しいじゃないですか。
評判や経験者等に話しを聞く等で販売店を見極め。かなり重要です。
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新聞屋のさわり。
アルバイト・パート
アルバイト・パートにも色々有ります。朝夕刊配達員、朝刊のみの配達員、夕刊のみの配達員、折り込み作業員、集金、電話番など。このうち私は朝刊のみの配達員です。
就業時期は不定期。店頭に募集のポスターが出る事も折り込みに広告が入る事もありますし、何よりアルバイト情報紙等にもたくさんのっています。ページを出している販売店でも募集している場合が有ります。それに従えばいいでしょう。給料仕事内容等も各々の販売所に問い合わせ。前述の通りかなり違って来ますから。
あ、給料はかなりいいですよ。1日の就業時間が短時間で高収入の謳い文句は満更嘘ではありません。新聞配達のおいしさを知ってしまってからは時給700円〜800円なんていうバイトは信じられなくなりました。
でも、新聞配達はその性格上1ヶ月間だけとかの短期間の就業というのは無理です。配達順路を覚えてちょっと配っただけでやっぱり止めた、では困ります。就業時間が短時間で高収入は嘘ではありませんが、「短期間」ではない事に注意。どんなに大した事がないと言ってもやる気と根気はかなり必要です。まあ、慣れてしまえばやっぱり大した事はないのですが。
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いわゆる新聞屋さん。
専業従業員
新聞販売の業務全般をこなす専業。折り込み作業、配達、拡張、集金、読者管理等。これも就業時期は不定期。アルバイト店員と同じような募集のされかたをします。ただ、最近では企業的新聞販売店が増えているようで企業の社員的な採用のされかたをするところもあるそうです。条件も販売店によってまちまち、各々の販売店に確認してみないと分からないでしょう。
しかし、専業は何時まで経っても専業のまま、何歳になっても何年経験を積んでも。いいところ店主の信用を得て支店の店長になれるくらいまででしょう。将来店を持ちたい、独立したいと考えるならば店主候補生にならないと無理だそうです。
で、後述の販売店店主が言うにはだらだら何時までもバイト、専業をやっている店員は扱いに困る、だそうです。何かの職に就きたくて一時的にバイト、専業をするというのが望ましいと。その店主は「うちに来ていたバイトのアンチャン、3人が郵便局員になったよ」と喜んでいました。もちろん、私も大学に行く為に一時的に配達員をやっているだけ、のハズです。だらだら過ごしていると気が付いたら専業になっていた、という危険性が・・・
ただし、そう言うだらだらした従業員が居ないとやっていけないのもまた販売店、と嘆いていました。
「何はともあれ、向上心が無いのはだめだね」と言い切っていました。
補足:大型積立金制度
もし、何かの目標を立ててその為に専業従業員になるというのならばこの制度を利用しない手はありません。基本的に何処の販売店にもあるはずです。
簡単に言うと或る一定の決められた年数を勤め上げたら積み立て金額に販売店と新聞本社が上乗せして(ここが積み立て金額の倍だったり3倍だったりする)小切手で払ってくれると言うものです。具体的に幾らに成るかってのはかなり内部の話になるし店に拠って違ってくるものなのではっきりは言えませんが、かなり割は良いかもしれないです。その制度を使うことを前提に専業になると店に持ちかければ話をしてくれるとおもいます。
積み立て金額はコース(勤続年数に応じてコースがある)によってまちまちですが、積み立て制度で10万20万を積み立てることは出来ません。それほど積み立てたい場合は制度の積み立て金以外に自主的に積み立て金額を決めて銀行などでやるしかないでしょう。郵便局の簡保とかも視野に入るかもしれませんね。
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自分で稼いでお勉強。
奨学生
各々の販売店で募集している場合もありますし、新聞社が斡旋してくれる場合も。新聞社では奨学生募集のパンフレットを作っているのでそれを参考にすれば条件等が全て載っています。ただ、「条件が違う!」という問題も一部では発生しているとか・・・私は奨学生になった事はないので分かりません。条件は販売所にきっちり確認しておかないと泣きを見るかも。
ちなみに私がいる販売店に来ていた奨学生の話しでは、奨学生はバイクでは配達できないそうです。また、朝夕刊配達か朝刊の配達と集金、どちらかを選べといわれて朝夕刊配達を選んだそうです。まあ、この辺りの条件も販売店毎にまちまちじゃないんですかね?カブで配達している奨学生はかなり居るみたいですから。
卒業後の進路について。卒業後は就職活動をしたのち一般の企業に就職するというのが普通でしょう。しかし、奨学生にはそれなりの特典も。なんでも新聞社への就職が多少有利になるとか。後述の店主の販売店担当の新聞社販売局の人は奨学生上がりだそうです。また、販売店にもよりますが店主候補生、幹部候補生としてその販売店に就職してしまえばかなり優遇されるとも・・・
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ディープで特濃な世界。
拡張員
主に拡張を生業としカード料が給料、何処の販売店にも属さない販売店や新聞社とは独立した組織の中で活動するのが拡張員です。基本的に@@会や**団と言った拡張員の団体に所属して、販売店に出入りし拡張業務をこなします。
募集は販売店や新聞社ではしていません。スポーツ新聞などの3行広告にある「新団」「拡張」等のの文字が躍るのが募集の広告です。と言う事で募集は不定期。
給料、条件等は団体によって千差万別、これといった基本みたいなものもありません。傾向としては、完全歩合制。仕事をしなければ給料は無し、仕事をした分だけ給料が出る、かな。
まず、団体で販売所に入店し拡張業務をこなし、団長なり会長が店主から一括してカード料を受け取り、それから「内金」を当日払い、「残金」を月払い、拡張したカードの数分だけ「まとめ」を貰う。そんな感じでしょう。おー、更に一般受けしないような言葉が飛び交う。そんな職業です、拡張員は。
ここから先は募集先に電話で問い合わせて下さい。私にはとても語れるような世界ではありません。
あ、何処の団体にも所属せず、思い立ったその場で「拡張員」を名乗る事も出来ます。しかし、不良カードなどが発生した時対処のしようがない場合がほとんどなので、販売店側で信用してくれず拡張業務はまず出来ないそうです。
ただ一つ言えるのは「フツーの人がいきなりなるような職業・・・・・かな?」。どうなんでしょう?
キーワードは、良くも悪くも「押し」ですかね・・・
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究極の選択
店を持つ
私と仲の良い、他紙販売店の店主(販売店の社長だね)に話しを聞く事が出来ました。
この店主は、権利を買い取って(と言う事は新聞店主歴)25年。
他紙の、それもただのヒラバイト配達員の私に
何故こういう話しをしてくれたのが気になりますが・・・
店を持つ段取り
店を持つのに、「さあ、店を持とうか」と思いたったからと言って簡単に店を持てるわけではありません。店を持つという事は一つの独立法人として会社を起こし経営をしていかなければならないのですからそれなりの経験と知識が必要です。その上、新聞販売という業種の性格上多彩な人脈も必要になって来ます。そして一番大事なのが資金。これはかなり用意しなければなりません。
まず、店を持つには新聞販売の権利を買わなければなりません。販売店は区域の人口によっておかれているものです、店を作りたいからといって勝手に作る訳には行きません。新聞社本社の販売局の意志で新聞専売所は配置されます。しかし、販売店が頻繁には開設される事は有りません。依って現在のところ既設の新聞店の権利を買い取って店を持つと言う事が普通です。
ではその権利を買い取るにはどうすればいいか。ただ金があれば簡単に買い取れる、と言うものでもないようです。権利を買い取るには他の店主の推薦やつてが無いと難しいそうです。
その推薦を取り付け、つてを作るにはどうするか。店主候補生として入店(就職)するのが一番の早道。店主候補生として店主の元で経営のあらゆる事を学び、その間に人脈を作り、そして自分が居る店の店主に事情があって店の権利を売りたがっていると言うような店主を紹介してもらう、というような段取りで店を持つ事になるとか(ここではその店主の人脈がモノを言っている)。
また、自分がついている店主が跡継ぎがいない(子供が継がないなど)、年齢の限界などで引退する時権利を譲ってもらうという事もあります。
ですから、とんとん拍子で行けば数年で店を持つ事も可能。
店を持とうと思ったらただの専業からではなれないという事です。せいぜい支店の店長止まりでしょう。店主候補生で入店、これがはじまり。
しかし、それでも順調に店を持てるというものでもないそうです。販売店の数には限りがあります、けれど店主候補生は増え続けています。つまり順番待ちもある、と。競争率も高い。だから運も重要なのかもしれません。
あ、新聞屋の権利を手に入れてしまえば、なにも自分自身で新聞店経営をしなくてもいい、という場合が有ります。店長や従業員を雇って経営の全てを任せてしまう事も出来るとか。だから、一企業の一部門として新聞販売をする、なんて事もありかもしれません。
権利の値段
では、その権利の値段はいかほどなものか。
権利の値段は、買い取る販売店が管理する区域の読者数と新聞の月極購読料によって決まります。読者数が多ければ多いほど、購読料が高ければ高いほど値段は上がります。と言う事は販売店によって値段が違ってくる訳です。そして権利の売買というのはキツイ言い方をすれば区域内の読者の売買、と言う事になるのでしょうかね?
私が話しを聞いた店主は月極購読料900円位の時に権利を買ったそうです。しかし、当時に比べれば読者数も増え購読料も3000円以上に跳ね上がりました。だから権利の値段は25年間で比べ物にならないほど上がった訳です。権利は一種の財産ともいえるものだ、と店主は力説してくれました。
現在、権利を買い取るだけで2000万円は用意しなければならない、というのが通説です。
ランニングコスト
さあ店の権利も買い取った、それじゃすぐにでも新聞販売ができるか、できません。ただ販売の権利がある、それだけです。新聞販売は新聞社から新聞を買いそれを売るという、一般のモノを仕入て売る、それと同じです。ですから新聞を仕入れる資金が必要になります。
また、店主一人では販売店はやって行けません。配達、拡張、集金は人を雇わなければ無理です。人件費が必要になってくる、と。それにその他の細かいものの仕入れ、例えば雨の日に新聞を入れるビニル袋、古紙を梱包する為の袋などは全て販売店で買う物です。さらに拡材などももちろん購入物。配達用のバイクや自転車も然り。諸経費も馬鹿にはなりません。
新聞購入費は翌月にはもちろん回収できます(集金が出来るから)。しかし、利益が確立するまでのしばらくの間は人件費、諸経費は出さなければなりません。当面の運転資金も必要です(それもかなりの)。
店の拡張
販売店の経営も安定し、資金に余裕が出来たら他の販売店の権利を買いとって支店を作る事も出来ます。その場合店長を置かなければならないのですが、その店長は自分の元にいる店主候補を修行に出すとか長年専業で勤め信頼できる人物を据える、または他の販売店から引き抜いてくると言う事で対応します。最後の店長の引き抜き、これは人脈が物を言わすところです。
店主の悲哀〜〜読者に一喜一憂〜〜
店主は普通の従業員以上に読者数の増減に気を使います。アルバイト配達員や専業はあくまで雇われ人、給料を貰って働いている身です。読者数が多少減ったところで給料に反映されるのは僅かなものです。カード料が少なくなったとか。
しかし、経営者にしてみれば読者数減は売上減に直結して来ます。例えば1ヶ月1軒配って300円貰っているアルバイト配達員にしてみれば読者が10人減れば3000円の減収になります、けれど経営者にしてみれば30000円以上の売上減になってしまうのです。よく考えれば当然扱くの事。こんなところで経営者は苦しんでいたりして。でも、その反対もある訳ですが・・・読者数の増減に頭を悩ます日々が続くとの事。
また、読者には2種類有ります。固定読者と交替読者。交替読者はころころ購読新聞が変わりますので売上のあてにはあまりなりません。経営の安定には固定読者を如何に確保するかがポイント。しかし、そう簡単に確保できないのが固定読者。交替読者が固定読者になるという事もまれです。
固定読者を増やすには他区域から引っ越して来た読者を取り込む事(新勧)に掛かっています。でもそういう読者は他紙も狙っています。頑張りどころ。
最後の「店を持つ」の話しを聞いていて、「こりゃまるで”信長の野望”(国捕物戦国シミュレーションゲーム)を地で行くような話しやん」と感心してしまいました。私はその手のシミュレーションゲームは好きですから妙に納得出来る部分が多かったです。
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