パチタフ 〜パチモン・タフアップチューブ〜

  「パチモン」・・・関西弁で「ニセモノ」って意味です。けっしてポケモンの親戚ではありません。
 
  本題。PressCub50ではC50BNDv(DX、フレーム号機C50-0800001〜)とC50BNv(ST、フレーム号機C50-0800001〜)から、タフアップチューブ(TUFFUPチューブ)と言う、チューブの内部を二重構造にしてパンク防止液を封入し、釘等の異物による穴を塞いでパンクによる空気漏れを最小限に留める目的のチューブが標準装備となりました。
 
  タフアップチューブの、PressCub50サービスマニュアルによる説明(転載)。
  釘等がチューブを貫通し穴があくと、釘とチューブのすき間に防止液が押し出される。この時、防止液の中の繊維がゴムの弾性力で釘とのすき間に挟まれる。更に、穴を塞いだ繊維の間の小さなすき間を微粉末や防止液が覆うことによって気密性を保つ。(防止液の主成分:水53%、プロピレングリコール40%、繊維分5%、その他2%)
  刺さった釘が走行中に抜けた場合においても、その穴に防止液が押し出され、釘が刺さったときと同様の工程で穴を塞ぐ。防止液の入った液室は常にチューブの空気圧を受けているので、液室のどの部分に穴があいても防止液が確実に押し出され、穴を塞ぐ。
  もし釘を拾っても取り敢えずは穴を塞いで空気抜けちまうのをしばらく防止できるということでしょうかね。釘を拾いしな途端に空気が抜け始めて走行困難に陥ることが、即配達不能につながる新聞配達にとって、これはかなり有用なものかもしれません。とにかく店に戻るなり修理に付近の自転車屋バイク屋に向かう間だけでも空気が漏れずに走行できれば、パンクで走行不能・・・そのまま途方に暮れるなんて事も無いですし、その場でパンク修理なんてのは普通配達中にはやらない、出来ない事ですし。
  こんな良いモノ、新しい物好きの私が心打たれないわけないのですが・・・残念ながら現在の私の愛車には標準装備ではありませんでした。私が駆るPressCub50はC50BNDs、つまりタフアップチューブ標準装備の一つ前の型。しかも、C50BNDvが出たのが納車されたわずか1ヶ月後だったので、その存在と装備を知った時かなり悔しい思いをした記憶もあります。
  その後タイヤやチューブを交換する機会は何度も訪れましたが、そのたび心の中では「是非タフアップチューブを・・・」と望んだにもかかわらず意のままにはいきませんで、j結局安っぽい普通のチューブを入れることで誤魔化されちまいました(?)。そのまま悶々とした日々を過ごして先日、自らの手で初めてタイヤ交換をしたのですが、その際原型を留めたチューブをはじめて目にしました。そのチューブは・・・なんとも貧弱で頼りないものでした。自分のカブ操作の妖しさもあってかなり心配になりましたよ、どうにかしなければと思ったと共に、ふと或る事までやってみたくなったのであります。とりあえずチューブはそのまま使用する事にし、タイヤ交換を終わらせました。
 
  数日後、決行。簡単に言えば、ハードチューブにパンク防止液を押し込んで、タフアップチューブと同等、またはそれ以上のものを期待した状態にしてしまおうという試みです。これ、オフロードバイクの世界では結構前からあった方法なのですが、たかが新聞配達用のカブにハードチューブを組み込んでその上パンク防止液を入れちまおうってのは普通やらない事だとおもいます(^^;; レースにでも出ようってんかい<私
  まぁ、試してみたかったんですよ。
 
  施工はリアタイヤのみです。
  用意したもの
  これがハードチューブ。ダンロップのもの。天然ゴム製で厚さ2倍、しかし値段も2倍(2100円で買った)。なかなかの高級品です。ヘビーチューブ、強化チューブなんて呼ぶ事もあります。 
  果たしてカブのリアタイヤのサイズに合う物があるかどうかが少々心配でしたが、タイヤサイズ対応表を眺めていて・・・へっへっへ、発見。どうもCRM50/80のフロントタイヤ(70/100-17)のものが合いそう。で早速買ってきたのでした。
  パンク予防剤「WIN」。発売元ホンダアクセス、値段は・・・う〜ん・・・知らない(爆)  実は、以前レースに出た時(XR250で)参加賞で貰ったものなので買ったわけではないのです。今回こんなことやろうと思ったのも手元に転がっていたからかも・・・。昔の雑誌を紐解いてみると8オンス入りで2600円よりだそうです。今回使ったものも8オンス入り。ただし、オンス単位で表示されてもいまいちなじみが無いのでcc表示の方が良かったです(でもボトルには書いてある)。まるで貴金属ですな。 
  成分は「プロピレングリコール(38%) パルプ繊維、人造繊維、着色剤、添加剤、水」、ですからタフアップチューブに封入されている防止剤と大差ないものと思われます。 
  ちなみにムシ回しがついているのですが、使い勝手はかなり悪いです。
   まずはチューブを組み込む
  ホイールを外す段階は省略しまして、いきなりチューブを取り出すところから。実はチューブ交換するだけならここまで完全にホイールを外す必要はなく、アクスルシャフト抜いてフランジからダンパーをずらすだけで出来るのですが(但し自らやった事は無く自転車屋の造作を見た結果)、今回の造作はこれまで見た事ない事なので完全に外してやる事にしました。 
  とにかくチューブを取り出します。あ、チューブ交換なのでタイヤをホイールから外す必要は当然ないです。タイヤのビート(耳)の片方外せばそれで良し。 
  今ついているタイヤはブリジストンのG556、数日前に交換したもの。で、交換前の古タイヤを交換台にしています。 
  タイヤは先日外したばかり・・・結局色々あって都合4回ほどタイヤを外しーの組みーの、な〜んてやっちゃいました。さすがに慣れました。
  左側がハードチューブ、右が交換前の安っぽいチューブです。幅と厚さを見比べたら当然ハードチューブの方が両方とも勝っています。こんなのタイヤに押し込めるのか?と心配になってしまうほど。 
  交換前のチューブは去年9月に交換したものなのですが、納車時に装着されていたであろうブリジストン製のものではありませんでした(パーツリストにはブリジストン製とある)。「million」とかいうタイ製のものでした。自転車屋が安く買ってくるらしいです。ちなみにそれの値段は1000円なり。標準のブリジストン製はパーツリストには時価とあり、詳細な値段は不明。
  とにかくチューブを押し込んでみたら・・・はいっちまったんですねぇ、そんなに問題無く。ただ、タイヤの中がチューブで一杯になっちゃう感じにはなりました。幅と厚みでそうなってしまうのはしかたがないでしょう。 
  タイヤの中に詰め込んだら、空気を入れてチューブの撚れを直します。元のチューブと違って幅と厚みがあり、やっぱり何処か無理が無いような気がしないでもないので大抵撚れています。撚れを手で修正してまた空気を抜きます。撚れたままタイヤを組んでしまって、あとでそれが原因のリム打ちでは面白くもなんともありません。
  チューブがタイヤ一杯になっているのでチューブを噛まないように慎重にビートをはめていきます。こんな貧相なタイヤならビートクリームなんか塗らなくても簡単にはまっていくのですが、万全を期して塗っておくのも良いかもしれません。ビートがはまりやすいってのもありますし、レバーをこじることなくすんなり抜くためにも。 
  空気を入れてビートをリムに押しつけて完成。ここで「シュー」とか音がしたら、またチューブを取り出してパンク修理をして・・・ま、簡単に言えば「振り出しに戻る」です。見なかった事・聞かなかった事にはできません :-)  ハードチューブ、或る程度はチューブ噛みには強いのですが、限界を超えるといともあっさり穴があきます。
  これは、元のチューブについていたバルブキャップ。キャップの上部がムシ回しになっています。使い勝手はかなり悪いですが、いちおうハードチューブの方につけておく事にしました。 
  外したチューブは、穴があいていないことを確認し保存しておいて緊急用にとっておきます。
 
  取り敢えず装着して走行してみた感想は・・・別に何ら変化は無いです。オフロードバイクでは、リアが重くなるので挙動が変になると言われるのですが、たかがカブですぜ、ジャンプするわけじゃないしとんでもないギャップを超えるわけでもない。ましてやハードチューブが本来必要そうな激しいガレ場を走るわけでもないので、変化を体感できるわけが御座いませんです、ハイ。
  パンク防止剤を注入する
  まず空気を抜き、ムシも抜いちまいます。チューブの中に繊維入りの液体を流し込むのでどうしてもムシは抜かなければなりませんね。 
  バルブの位置を5時または7時のところにしろとありましたので、写真は5時のところにしています。まぁ、6時のところでは液体が下の部分に溜まってしまって押し込めなくなりそうなのは明白だし、10時〜2時の部分ではそもそも入れられない・入れにくいでしょうから当然でしょう。
  キャップを確実に締めてボトルをよく振れ、だそうですからガンガン振りまくり。振らないと液体(大部分が水だろう)と繊維分が分離していて効果が発揮できそうにもなかったから素直に従いました。 
  んで、ガンガン振って混ざり合ったところで(キャップを外して中を眺めてみる)キャップの先端を1cm位切って、付属のチューブをキャップの突起部分(微妙に”鍔”みたいになってる)までがっちり押し込みます。
  バルブにチューブの先端をぐいと押し込み、ボトルを握って絞り、液体をチューブ内ににゅるにゅる入れていきます。これ、一度で規定量を押し込めないので(チューブ内の空気圧が高くなりすぎて中に入って行かない)チューブを抜いてはまた挿して押し込んでボトルを押して・・・を繰り返します。 
  さて規定量ですが、このボトルには「このタイヤサイズにはナンボ入れる」と言う記述がありませんでしたので、昔の雑誌をまたまた紐解いて調べましたところ、18インチタイヤの場合6オンスだそうです。多分18インチでもオフロードバイクのリアタイヤみたいな”太い”のを想定しているのでしょうから、今回の場合17インチで細いタイヤですから5オンス入れる事にしました。さて、これでいいのかどうかは分かりませんけどね・・・
  注入後バルブ内側に付着した防止剤をエアで吹き飛ばせとありましたが、エアツールなんてご大層なものは持っていないので、手押し空気ポンプで吹き飛ばしました・・・が、簡単に吹き飛ばなかったので、紙縒り(こより)状にしたチリ紙を突っ込んでふき取りました。 
  ムシを入れて空気を規定量入れて取り敢えず防止剤注入は完了。これをチューブ内部に満遍なく行き渡らせなければなりません。センタースタンドを立ててリアタイヤを空回りさせた後夕刊配達に出る事にしたのでした。 
  最初こそビートストッパーを入れた後高速道路を走ったオフロードバイクのような挙動をするのですが、しばらくすると液体がチューブ内に行き渡ったのか抵抗感は無くなりました。
 
  効果の程
  釘か千枚通しでも刺してみれば一発で効果が分かるでしょうが、残念ながらそこまでやる勇気はありませんし、財布の口も開くのを拒んでいます(^^;; ですから実際配達中にそういう事が起こった場合はここに追記しますが・・・今回の実験が実験ですから、果たして釘を拾ったとかに気が付く事があるのだろうか?とちょっと心配になったりしてます。
  少々空気圧が低くなったくらいでは気が付かないかもしれません、何しろハードチューブは普通の合成ゴムせいのチューブに比べて些少ではありますが空気が早く抜けていくので、空気圧調整が頻繁になることが考えられるからです。まぁ、タマにカブをいじった時に「あ、なんか刺さってる」と思う事があるかどうかでしょう。
  しかし、そこまで気が付かないで済むって事は、実験が成功しているとも言えるかもしれませんね。
  そんな訳で、やはりかつての雑誌の評価を転載(TOUCHBIKE1995年7月号)
  で、ハードチューブを入れたのでリアタイヤに関しては配達途中で起こりうるリム打ち程度なら恐いものなしになりましたのでガンガン段差を越えています。そんな段差は大抵フロントタイヤを浮かせ気味に通過するので、心配するとすればリアタイヤのリム打ちだったですから。当然ですが、交換して数日しか経っていない現在、リム打ちに因るパンクは発生していません。ただし、リムうちに因るパンクには防止剤は効果はなさそうですけど。
   パンク修理等
  パンク個所が発見できたら、釘などの異物を取り除いてパンク修理をしたほうがいいでしょう。防止剤の成分を考えると、チューブを水で洗うなり拭き取るなどしてパンク修理が出来そうです。
  で、一般的にハードチューブみたいな天然ゴム製のチューブはパンク修理が出来ないと言われていますけど、これが結構出来ちゃいます。普通にパッチを貼って穴を塞ぐように、ハードチューブでこの造作をしても貼りつきました・・・オフロードバイクでの事ですけどね。その後2回ほどコースに出て走ってきましたが、今だ問題なく(パッチがはがれることなく)走行できています。
  コストパフォーマンス
  よっぽどの物好きでない限り、先手を打ってのパンク防止を期すならば、純正のタフアップチューブを買ってきて組み込んだ方が全然安いです。今回はやってみたかっただけでやった事をページの1コンテンツにしただけですから、こんなこと真似する人もいないでしょうね、きっと。
  私が再三書いているリム打ち防止にしたって、タフアップチューブの底面が2重構造になっていてそれだけでその部分に関しては普通のチューブの厚さの2倍ですし、尚且つ防止剤が封入されているのですから防止剤がクッション代わりになることも期待できそうです。
 
  結局はハードチューブに防止剤を入れただけのものですから、タフアップチューブにはなりきれていない、でも何とかそれと同等の効果は期待できそう・・・そんな訳でパチタフと名付けてみたのでした。


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